第6回容器包装3R推進フォーラムin名古屋レポート

去る1024日、第6回容器包装3R推進フォーラムin名古屋が3R推進団体連絡会の主催で開かれた。午前中は、神戸大学大学院経済学研究科教授 石川雅紀氏による基調講演『容リ制度の成果、今後の課題』のほか、3R推進団体連絡会の活動報告、名古屋ごみレポート、また、国の政策について経産省、環境省、農水省から報告があり、午後は『リターナブルびん促進策』、『消費者の行動変革』、『多様な回収システム』、『プラスチックリサイクルのゆくえ』の4つの分科会が開かれた。平成24年度予定の次期見直しの論点を報告する。

 

容リ法によりごみは減ったのか

神戸大学大学院経済学研究科教授 石川雅紀氏は基調講演の中で、「一般廃棄物の総排出量(集団回収、分別回収量を含む)は2005年度に増加した後、減少傾向にある。最終処分量は減少を続け、1990年度から2009年度にかけて1,200t近く減った。同期間の資源化量の増加が約500tであるから約700t6割)は中間処理で削減されたと考えられる。日本容器包装リサイクル協会に再商品化が委託された量は2009年度では116t1割)、残り384t3割)は容リ法以外の分別収集量の増加と見積もられる。最終処分場の残余容量は1996年〜1998年度は増加したが、それ以外の期間は減少している。」と話された。

また、環境省からは平成22年度のデータにより、容器包装廃棄物は容積比で50.1%、重量比で17.8%と、ここ数年は一人あたりのごみ排出量は減少傾向で、比率も減少していることが報告され、経産省からは平成233月のデータにより、容リ法制定以後、一般廃棄物、産業廃棄物共に、最終処分場の残余年数は増加していて、一般廃棄物の場合、平成20年度で18.0年であったものが平成21年度で18.7年に転じていることの報告があった。

 

役割分担の見直し

「環境省が平成15年度に行った調査による推計値では、市町村の容器包装廃棄物の分別収集にかかる費用は、管理部門を含まないと年間1,682億円余、管理部門を含めて2,307億円であった。事業者が日本容器包装リサイクル協会に委託して再商品化事業者に支払った委託金合計額が416億円と比較すると、市町村で分別収集・選別保管のためにかかっている費用がいかに巨額であるかが分かる。市町村の負担が大きすぎるとの理由で、分別収集・選別保管費用の全部または一部を事業者に負担を求めるのであれば、EPRの考え方(使用した容器包装の量に応じて支払うべき)からすると、素材別の費用・単価を明らかにする必要がある。

環境省の2004年の報告では、プラ容器包装の場合、管理費込のフルコストで中央値(ばらつきが大きいため、平均値でなく中央値を報告した)133/s、最大1,643/s、最小0.5/sとなっており、市町村によるばらつきに対して合理的な説明がされなければ事業者に負担を求める根拠は弱い。環境省は前回見直し後、廃棄物会計のガイドランを作成したが実行している市町村が少ないため、市町村ごとの単価を相互に比較できるデータがない。国民が支払った税金の使途を説明するという意味でもコスト構造の透明化が必要である。」と述べられた。

 

発生抑制の推進

開催地である名古屋市から、第4次ごみ処理基本計画(平成20年度〜32年度)における発生抑制の取り組みの報告があった。平成19年度から始まったレジ袋の有料化により、9割のレジ袋辞退率(平成233月現在、924組合1,352店舗が参加)を上げており、市民の関心の高さが伺える。

容器包装の軽量化を進めるためには容器包装中身の保護、輸送、表示、販売等の機能とのトレードオフの問題を解決することが必要である。この解決策の一例として、NPO法人ごみじゃぱん(代表理事:石川氏)が推進している「減装(へらそう)ショッピング」の試みを挙げ、神戸大学の学生が中心になって、容器包装重量によるランキングと売り場での表示とその効果の定量的実証を続けていることが紹介された(第2分科会『消費者の行動変革』の中でも報告があった)。包装ごみの少ない商品を選ぶ買い物基準を普及させ、ごみを減量するプロジェクトで、神戸市内のダイエー、コープこうべ、ジャスコの3つの流通店舗で「減装(へらそう)商品」のPOPをつけ、消費者の購買行動を容器包装の少ない商品へ向けさせ、メーカーにも容器包装の少ない商品が売れることに気づいてもらい、この運動をメーカーも一緒になって進めて行こうというもの。ヤマザキパンがロールパン他の袋を軽量化し、減装商品のロゴをつけて全国で売り出しているなど確実にメーカーと協働で運動を展開し、成果を上げている。

ごみじゃぱんでは消費者の行動変革のために、ネガティブメッセージではなくポジティブメッセージを伝え、コミュニケーションを大事にしているとのことで、つながりを深めて行くぬくもりの感じられる運動だと思った。

発生抑制をさらに進めるためには事業者だけでなく、生活者、流通、行政などとの協働の取り組みがカギとなる。このためには、利害関係から中立の立場であるNPOの役割に期待がかかる。

 

再商品化手法の見直し

プラスチック製容器包装の再商品化手法の見直しも大きな論点である。マテリアルリサイクルが優遇され、単価がマテリアルリサイクルの方がケミカルリサイクルよりも高いことが、プラスチック製容器包装の再商品化費用を押し上げている。前回見直しで問題になった点は、マテリアルリサイクルの歩留りの悪さ(約半分)、製品用途の不透明さ、コストの高さであった。LCAの比較によると優劣はつけ難く、費用に見合う効果があるかどうかは検討すべきという結論が得られたが、当面マテリアルリサイクルに対する優遇措置は残された。

私たち消費者にとって、マテリアルリサイクルはわかりやすいと思っていて、どうもケミカルリサイクルやサーマルリサイクルには抵抗があったのだが、実情はマテリアルリサイクルの半分が燃やされサーマルリサイクルされていること、再生品はパレットやコンパネなど産業系の製品が主で、身近な生活用品にリサイクルされているわけではないことなどを知ると、私たちにはリサイクルの実態があまり知らされていないことがわかる。また、食品トレーメーカーの中央科学(株)の報告によると、コークス炉科学減量化法(ケミカルリサイクル)によって炭化水素油(40%タールを含む、)とコークス(40%)、コークス炉ガス(40%)が取り出され、PSトレーto PSトレーに再生できるなら、こちらをマテリアルリサイクルと呼んでも良いのではないだろうか。最近、透明トレーの回収をしているスーパーが増えたが、PSPだけではなく、他の材質(PETのトレーも増えている)のプラもOKと言っているので何故かと思っていたが、ケミカルリサイクルされているなら納得が行く。

国の審議会(中央環境審議会、産業構造審議会の合同会合)の取りまとめによると、平成23年度以降の入札に反映させるべき措置として優先枠取扱における上限を市町村の申し込み量の50%に設定するなど暫定措置が取られるようになった。石川教授は、再商品化の評価基準に基づいて議論した結果、現行のマテリアルリサイクル手法を前提とする限り、マテリアルリサイクルの50%枠を継続する合理的な理由は見当たらないとしている。                     (記 水川 晶子)